2009年10月01日

30年近い歴史を誇るアニメクラブ「フィラデルフィア・アニメーション・ソサエティ」メンバー・インタビュー


同じ、アメリカのアニメクラブ絡みで、先に
小ネタを。
アメリカ・ミネソタ州立大学が発行している
大学新聞Minnesota State University
Reporter
の電子版が、9月29日付けで掲載
していた記事、

"Japanese animation fan group turns
campus into your parent's basement"


は、同大学のアニメクラブThe Society for
the Appreciation of Japanese Animation
and Culture ―― SAJAC(公式ブログ)の
活動を伝えるものでした。


記事自体はよくあるものですけど、その中で
気づいたのが、

「全員の用意が出来たら、クラブは現在視聴
している作品から、まず2エピソードを見て、
小休止とディスカッションをはさんだ後に、
また次の2エピソードを見ることになっている。
上映許可を得るのが難しいとされる劇場作品
については、見るのはまれだ」

という記述ですね。
ということは逆に、テレビシリーズ、あるいは
OVA作品については、アメリカで権利を保有
している会社さんから、ちゃんと上映許可を
もらって、上映してるんだなって。
日本でも同じですけど、アメリカでも公共の場
所で、正規の作品を上映するには、その作品
の権利を保有している会社から、上映の許可
を得る必要があります。
ところが、アメリカの大学のアニメクラブなど
では、メンバーが百人超えの大きな規模のと
ころでも、正規にリリースされていないファン
サブを、クラブ活動の中で、平気で上映してい
るところが、けっこう多いんです。


もし例えば日本の大学の映画研究会で、大
学の敷地内の設備でクラブの活動の一環とし
て、日本でまだ公開・放送されていないアメリ
カの作品に、勝手に日本語字幕を付けたもの
の上映会を行ったりしたら、きっと大問題にな
りますよね。
ところがアメリカだと、アニメ作品に関しては、
そういうことが普通に行われている。
おそらく、大学・高校のクラブが行うような、
非営利の小規模上映会ならば、アメリカのア
ニメ会社だって、普通に許可してくれる筈だと
聞いています。少し前ですが、Anime News
Network
の質問コーナーである"Hey, Answerman!"
で、アニメクラブでの上映についての質問を
読んだ記憶があります。先代Answermanの、
Zacさんの頃でしたけど。


映画作品についての上映許可を得るのが難
しい理由については、それぞれの会社で違う
かもしれないので、よくわかりませんが、
きちんとそういった上映ルールを守っているク
ラブは、応援したいと思います。
現在SAJACが上映している作品は、「Black
Cat」「灼眼のシャナ」 (共にFUNimation)
になりますね。


short_g.gif


というわけで、やっと本題。
フロリダ発のポッドキャストAnime World
Order
が9月30日付けで配信していたのが、

"Bonus - Interview With the 'Old Timers
of Anime,' Otakon 2009"


というエピソード。
これは、アメリカ・フィラデルフィア州で、
1982年9月に設立、といいますから、実に
30年近い活動歴史を誇る、たぶんアメリカ
でも最古のひとつであるアニメクラブ
Philadelphia Animation Societyの古参
メンバーのお三方に、今年のOtakonでイン
タビューしたものですね。
去年のOtakonでも、同じ方々にインタビュー
はしていて、その好評を受けての第2弾とい
うことになります(参考・当ブログ2008年10月
1日付け記事
)。


80年代初頭の、アメリカでのアニメファンダ
ム黎明期のお話は、いつ聞いても興味深い
です。
民用のビデオデッキ(もちろんベータ)が、やっ
と出回り始めたというだけではなく、「鉄腕ア
トム」「鉄人28号」の、16ミリ上映用プリント
フィルムがあったとか、なかったとかいう頃の
話ですから。
クラブの一番最初の上映会で見た日本の作
品は、「キャプテン・フューチャー」「サイボーグ
009」「流星人間ゾーン」などだったそうです
から、時代がわかります。



インタビューの中で、そういったネットも独自
のコンベンションもなかった当時と、今のア
ニメファンダムを比較した、印象的なコメン
トがあったんですね。
いわく――、


「パネルで、僕達がクラブを始めた頃と、
今のファンダムでは、どこが違うのかって
いう質問をされたんだけど、一番違うのは、
『アクセス』だね。
今は、誰とも直接話す必要なんてないよね。
すぐにネットに接続するだけでいい。ただタ
イプするだけで、誰とも顔を合わせる必要
もない。欲しいものを手に入れるのに、友達
を作る必要さえないんだ。今のファンダムから
は、何かが失われてしまっているように思え
るよ。
まあこういうコンベンションでなら、お互いに
話も出来るけど」
「今のファンダムで奇妙なことは、インター
ネットのおかげで、あらゆる趣味のクラブが
潰れかかっているってことだね。もう、直接
クラブのミーティングに足を運んだりしなくて
も、ネットで何でも手に入るんだから」


というコメントです。
かつてのアニメファンダムで一番大切だった
のは、自分あるいは自分達が持っていない
ような作品・資料を保有している、他のファ
ン達とのコネクションであり、そういった関
係を築くためのコミュニケーション能力だっ
たわけですが、ネットがある今では、そういっ
た人間関係がなくても、一人でいくらでもア
ニメを楽しめるようになってしまった。
アニメに関わるものが入手困難だった時代に
苦楽を共にした友人達と、今でもクラブで友
人としての関係を保っている方達にとっては、
便利な一方で、自分達のような親密な人間
関係を築けない、今のファンダムには、寂し
さを感じたりもするようです。
30年近くも、Philadelphia Animation
Societyが続いてる理由を訊かれて、力強く
答えたのが、「Friendship!」でした。
ただもちろん、ネットでの色々なコミュニティ
やアニメコンベンションのようなイベントで、
関係を築ける手段が増えたのも確かですか
ら、人間関係の種類の違い、とはいえるかも
しれません。


short_g.gif


インタビューの中では、僕程度の人間ではつ
いていけない濃い話も多くて、そういう意味で
は驚きと楽しさもいっぱいです。
例えば、お気に入りのアニメソングを訊かれて、
次々に挙げられたのが――、


「スペースコブラ」OP/ED(1982〜1983)
「超時空世紀オーガス」OP/ED(1983〜1984)
「超時空騎団サザンクロス」OP/ED(1984)
「サイボーグ009」OP/ED(1968年)
「サイボーグ009」OP/ED(1979年)
「死ね死ね団のテーマ」
 (愛の戦士レインボーマン挿入歌 1972〜73年)
「超電磁ロボ コン・バトラーV」OP(1976〜77年)
「孤独の旅路」
(サイコアーマー ゴーバリアンOP 1983年)
「重戦機エルガイム」OP (1984〜85年)
「宇宙戦艦ヤマト」OP(1974年)
「戦国魔神ゴーショーグン」OP(1981年)
「FIGHTING ON」
(亜空大作戦スラングル2ndOP 1983〜84年)
「行け! 行け! メガロマン」
(炎の超人メガロマンOP 1979年)
「エリア88」OP(1985年)
「戦闘メカザブングル」OP(1982〜1983年)
「銀河漂流バイファム」OP(1983〜84年)
「ゴールドライタン」OP(1982〜1983年)


などでした。
皆さんが、アニメにはまった時期というのが
特定出来ると思います。
あ、ネットもファンサブもない時代に、どうして
こんなにたくさんの日本アニメを見られたかと
いう理由ですが、当時フィラデルフィアには、
ある日本人留学生がずっと滞在されていて、
大変なアニメファンである彼のために、日本
にいる家族の方が、アニメを録画したビデオ
テープを、定期的にずっとフィラデルフィアに
送り続けてくれていたそうなんですね。
有名人だったというその人と一緒に、たくさん
のアニメ作品を経験出来たというのが、当時
のフィラデルフィアのアニメファンにとっての
幸運だったそうです。今は何をされているん
でしょうね……。


posted by mikikazu at 12:23 | TrackBack(0) | 海外情報(北米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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