今月に入って、北米のアニメ・ファンダムで
話題を呼んでいるのが、Scott VonSchilling
さん(ブログThe Anime Almanac)がご自身の
ブログ及びTwitterで宣言した、ニュースサイト
Anime News Network(以下ANN)へのボイ
コット運動です。
投稿日である10月2日からの30日間、つまり
10月いっぱい、ScottさんのTwitterから、
情報のソースとしては、ANNにリンクしないし、
記事も紹介しない、という宣言ですね。
Scottさんがこういう活動を始めた理由は、
ANNが10月1日より掲載開始した、2009
年秋シーズン新作アニメのレビュー特集
である、"The Fall 2009 Anime Preview
Guide"です。
これは、今後2週間に渡って、日本で放送
される新作テレビアニメ第1話(第2話まで
含む場合もあり)のレビューを、可能な限り
早く掲載していこう、という企画ですね。
あくまで第1話及び第2話だけでの感想で
すから、シリーズ全体を判断するものでは
ないという意味で、"preview guide"と
題されています。
これら、レビューされている作品の中には、
北米地域ではまだライセンスされておらず、
合法的な手段では視聴出来ないものも含
まれていることを、Scottさんは問題視して
いるんですね。
現時点(10月5日午前)までに、レビューが
されている作品の、北米での状況を調べて
みると、
「犬夜叉-完結編-」
・ShonenSunday.com及び、動画配信サイト
Huluで、日本での放送(日本テレビ)数時間
後に、英語字幕版がネット配信
「ミラクル☆トレイン〜大江戸線へようこそ〜」
「乃木坂春香の秘密 ぴゅあれっつぁ♪」
「戦う司書」
「テガミバチ」
「アスラクライン」
「しゅごキャラ!パーティー!」
・動画配信サイトCrunchyrollで配信中
といった作品は、合法的にネット配信されて
いますが、
「生徒会の一存」
「聖剣の刀鍛冶」
「とある科学の超電磁砲」
「けんぷファー」
「クイーンズブレイド 玉座を継ぐ者」
「にゃんこい!」
「ホワイトアルバム シーズン2」
については、北米地域で合法的に視聴出来る
ルートを確認出来ませんでした。
つまり、北米地域に住む一般の人が視聴する
には、違法動画配信サイトなり、P2P経由で違
法ダウンロードするなりといった、違法手段を
頼るしかありません。
確認してみると、これらの未ライセンス作品全
てにおいて、既に英語ファンサブが制作・流通
されていることがわかりました。
ANN自身がどういう手段で、これらの作品を
入手しているかはともかく、Scottさんの問題
提起は大きく分けて二つで、
・ANNという、大きな影響力を持つニュース
サイトが、ファンサブでしか現在見られない、
ファンサブでなら手に入る作品のレビューを
掲載することは、ファンの違法視聴を奨励し、
容認することにつながる。
・ANNは企業広告を掲載し、そこから収入を
得ている、プロフェッショナルなサイトである。
そういったサイトが、アクセス数を増やすため
に、違法配信を利用した記事を掲載すべきで
はない。
というものになります。
実は、ANNが違法配信されてる作品のレビュ
ーを掲載したのは、これが初めてではなく、
2008年の春シーズンにも、"The Spring 2008
Anime Preview Guide"という、同様の企画を
行っています。
その時にも、Scottさんは批判のためのコラム
を執筆したのですが、
The Anime Almanac
2008年4月16日付け記事
"What’s Happening to the Anime News
Network?"
結局ANNの姿勢は変わることがなく、
・2008年秋シーズン
・2009年春シーズン
と、北米地域では合法視聴出来ない作品を含む
新作レビュー企画を、ずっと続けています。
このScottさんの行動に対して、アダルトマンガ
専門の出版社Icarus PublishingのSimon
Jonesさんは、そのブログ2009年10月2日付
け記事の中でまず、今年4月に起きた、映画
「ウルヴァリン/X-MEN ZERO」本編流出事件
のことを思い出した、と語ります。
ネット上に違法に流出した、映画「ウルヴァリ
ン」の映像を見て記事を書いたコラムニストが
解雇されてしまった、という事件があったんで
すね。
参考 ―― マッシュ・アップ:フィルム
2009年5月6日付け記事
「先週末に全米公開された『ウルヴァリン
X-MEN ZERO』のネット流出映像を見てレビ
ューしたコラムニストが解雇!」
実写映画の場合だと、違法に入手した素材を
基にしたレビューを書いた人は解雇されるの
に、ANNの場合は何故問題とされないのか、
ということは、この事件が起きた時に、アニメ
ファンダムでも発言があったと記憶しています。
これを踏まえてSimonさんは、「一番重要なの
は、ANNをスポンサーしている、それぞれのア
ニメ・マンガ企業が問題とするかどうかだろう」
とコメントしています。
もうひとつ付け加えておくと、現在ANNは、
BANDAI ENTERTAINMETの「かんなぎ」の、
北米地域での独占配信サイトになっています。
その「かんなぎ」も、日本での本放送時、つま
りファンサブでしか視聴出来ない時期に、
2008年秋シーズン企画内で、レビューが掲載
されていました。
その事実を、BANDAIがどう考えるか、という
ようなこともあると思います。
Scott VonSchillingさんもかつては、
「定期的にDVDを購入するのなら、ファンサブ
を見ても構わない」という考えでしたが、ファン
サブが日米の業界に与えている害を、積極的
に北米のアニメファンダムに伝えている、声優
のGreg Ayresさんにインタビューし、そのパネ
ルを聞くことによって、ファンサブの問題点を
理解することが出来、今では全くファンサブを
見ずに、アニメファンとしての生活を満喫して
おり、またジャーナリストとしての活動も、本格
的に進めつつあります。
今回の行動は、少なくとも問題提起としては
意味があるでしょうし、それなりにファンダム
に伝わっているのだろうと想像します。
結果については、何が起きるにせよ起きない
にせよ、いずれ見えてくると思うので、またレ
ポートしたいと思います。