集中してお伝えしてきた、ニューヨーク・ア
ニメ・フェスティバル(公式サイト)の話題も、
とりあえず今日で一区切りにしたいと思い
ます。だいたい、主なニュースは伝えられ
たと思いますし。
あ、日本からの大物ゲストである、アイドル・
グループAKB48さんについては、実は今ま
でに1曲も、その歌を耳にしたことがないく
らいに知識がないので、申し訳ないけどスル
ーですね。訪米を待ち望んでいた人は、もち
ろんみんな大喜びだったみたいですけど。
NYAF運営側からのリアルタイム告知も含め
て、イベントの雰囲気がよくわかったソース
のひとつがTwitterで、例えばThe Anime
AlmanacのScott VonSchillingさんが、
有名ジャーナリスト・業界人・ブロガーさんに
よる呟きを、開催前日から、それぞれの日で
時系列順にまとめてくれているので、読んで
楽しかったです。
エリカ・フリードマンさんがDeb Aokiさんと
たまたま会って、アニメ/マンガ・ジャーナリ
ズムについての楽しい会話が弾んだ、なんて
いう報告は、ぜひその内容を知りたいですね。
ああ、あとScottさんも、AKB48のパフォーマ
ンスが見られて、「もうこれで死んでもいい」
くらいに感動されたそうです。日本に住んじゃ
いましょう、Scottさん。
残念ながら、という声が多かったのは、他でも
ない現地ニューヨークの会社である、Yen Press
(公式サイト)が、パネルでもブースでも参加
していなかったことみたいです。
出版人であるKurt Hasslerさんは、会場に
顔を見せていたようですけど。
ADVからYen Pressに移って出版が再開され、
セールス的にも絶好調な「よつばと!」のお話
なんかを、聞きたかった人はたくさんいたでしょ
うね。
そうして結局、今年のNYAFの入場者者数は、
2万1388人ということで、昨年の1万8399人
から、さらに16%の増加率ということですね。
MediumAtLarge.net 9月27日付け記事
"21,388 – NYAF By The Numbers"
昨年の前年比24%増加に続いて、不況をもの
ともせず、二ケタ成長が続いているのはスゴい
ことだろうと思います。
アニメコンベンションに参加する人を、アニメ・
マンガのファンと称していいのなら、アメリカ
でアニメ・マンガのファンは増え続けている、
人気は高まり続けているということの、証明の
ひとつとしていいでしょうね。
で、今日の本題というわけで、そうやってコン
ベンションの参加者数は増え続けている、アニ
メ・マンガのファン層はアメリカで着実に構築
されつつある――のに、アニメDVDは売れない、
という溜息と困惑が伝えられていたのが、NYAF
2日目・9月26日土曜日の午後1時半から行わ
れたパネル、"State of the Anime & Manga
Industries"です。
これはタイトルそのままに、北米のアニメ・マン
ガ・ビジネスの当事者さん達が集って、市場の
現状を語り合うものですね。
参加者は――、
Adam Sheehan
(FUNimation シニア・イベント・マネージャー)
Keven Mckeever
(Harmony Gold マーケティング・コーディネーター)
Robert Napton
(BANDAI ENTERTAINMENT
マーケティング・ディレクター兼マンガ部門
エディター)
Ali Kokmen
(DEL REY マーケティング・マネージャー)
Ed Chavez
(Vertical マーケティング・ディレクター)
司会進行・Chris Mcdonald
(Anime News Network編集長)
といった方々でした。
アニメとマンガ業界からそれぞれ2人ずつと、
両方関わっている方がお1人、という構成で
すね。コンベンションでの業界パネルなんか
でも、お馴染みの方が多いと思います。
約1時間にわたって行われたこのディスカッ
ションの詳細については、Mania.comフォー
ラム経由で知った、こちらで報告されていた
ので、ざっと目を通してみました。
直訳は無理ですが、北米のアニメ・マンガ業
界の現状がわかるような、目立つ意見の要
旨を、いくつか抜き出してみたいと思います。
「アニメに限らない、DVD市場全体を見てみ
ると、不況や、他のメディアの登場と浸透に
より、ここ数年の下降傾向があり、アニメに
限定しても、DVDによるセールスが苦戦して
いるのは明らかだ。ずっと広く続いてしまっ
ている違法ダウンロードが大きな問題だと語
る最初の人間に、私がならなくてはいけない
ようだね」(Napton)
「アニメ・マンガのファン層は安定して育ちつ
つある。ただ、それがアニメDVDのセールス
には反映されていないんだ。マンガの方は、
当社(BANDAI)の商品については少なくとも、
好調ではあるけれど」(Napton)
「うち(Vertical)は、マンガ以外の書籍の方
を多く出版しているし、アニメについては全く。
けれど昨年度の業績は35%の伸びで、これ
は経済状況を考えるとスゴいことだった」
「だから全体的な、アジアン・カルチャーへの
関心は高まり続けていると思う」(Chavez)
「スキャンレーションやファンサブの問題が
ある」(Chavez)
「それについてはよく知らない」(Kokmen)
「アニメDVDの売り方は、単巻から13話入りの
BOXセットが主流になり、購買者も小売店もそ
れを望んでいるのだから、我々もそのトレンド
に素早く合わせなければならない」
「そのためには販売スケジュールや価格設定、
ライセンス料についても、これまでとは違うやり
方が必要」
(Sheehan)
「しかし日本では、いまだにDVD1巻に2話
しか収録していないDVDが売れているので、
権利者にBOXセットでの販売を納得させるの
はなかなかに難しい」(Napton)
「マンガのセールスがアニメほど落ち込んで
いないのは、やはりまだ、マンガは実際の印
刷物を手にして読みたい人が多いからではな
いか」
「DVDについては、大手の小売チェーンが多く
撤退してしまったが、マンガについては、まだ
それは起きていない」(Napton)
「北米のマンガ市場は、アニメのそれと比較
するとまだ歴史が浅く、飽和点に達しつつあ
るとしても、まだまだ多くの可能性を秘めて
いるのではないか」(Chavez)
「ネットでの同時配信は、間違いなく今後も
続いていくトレンドであり、全ての会社が、
日本で放送されたのと同時に見たいというフ
ァンの希望をかなえるために努力をしている」
「しかしながら、今のところそれによって十分
な利益を得られているところはない」
「どこも、同時配信から利益を得る方法を模
索している」
「とはいえ、合法的に作品を視聴出来る方法
を用意しておくことは、とても重要」
(Napton)
「制作委員会方式が主流な現在では、権利者
全員の合意を得るにも時間がかかり過ぎるの
で、同時配信を可能にするためには、日本の
側の革新も必要」(Sheehan)
「作者が完成させた原稿を、そのまま印刷所
に運ぶような、ギリギリのスケジュールで作ら
れている連載マンガの場合は、日本と海外で
の同時出版・配信は難しいと思う」
「ネット配信のプロモーション効果も確かにあっ
て、日本ではモーニング2がネットでの無料配
信を始めたら、実際の雑誌の売り上げも伸びた。
まあ、そもそもそんなに売れていなかった雑誌
ではあるけれど」(Chavez)
「マンガの場合は、デジタル配信を読むため
のデバイスの発達・普及がまず必要だろう」
(Kokmen)
という辺りになるでしょうか。
今は、DVDからブルーレイ、あるいはネット
配信といった、売り方そのものの過渡期の
中で、色々と各社の模索が続いているのが
わかります。
訳しませんでしたが、個人的な注目点として
は、Ed Chavezさんが、Verticalにマーケ
ティング・ディレクターとして雇われた理由と
して、目の前の会場に集まったアニメ・マン
ガファンを示したことがあります。
最新のマンガ作品を扱っているわけでは
ないVerticalは、アニメ・マンガファン間で
の知名度も高くなかったそうで、彼らに声を
届けるスポークスマンとして、MangaCastの
代表として活躍していたEdさんが、まさしく
適任だったわけですね。
多くの北米のマンガファンが、「Edさんが言っ
ていることなら」と耳を傾けてくれるのは事実
ですし。
その人気が、これからもVerticalの手塚治虫
作品や、フェリーぺ・スミスさんの作品のため
に貢献してくれることを期待します。