北米のマンガファン――特に「ARIA」(天野こずえ)の
ファンが、ここ数日混乱していた話なんですが、出版
社側からの公式なコメントが出ましたので、うちの方
でも記事にしておきます。
北米のマンガ出版社TOKYOPOP(公式サイト)から、
昨年12月2日に出版された筈の「ARIA」第4巻が、な
かなか手に入らないという話が、北米のマンガファン
の間で広まっているのには、少し以前から気づいてい
ました。
ご存知の方も多いように、この英語版「ARIA」の北米
での出版は、2度目になります。
最初は、テキサス州ヒューストンに拠点を置くA.D.Vision
のマンガ部門であるADV Mangaによって、第1〜3巻ま
でが2004年に出版されたんですが、そこまでで一度休
止し、しばらく動きがなかった後、翻訳権がTOKYOPOP
に移り、2008年1月から、あらためて第1巻からの出版
が開始されていたんですね。
そういう経緯をふまえての、ファンの間での憶測は、
「既にADV版の『ARIA』第1〜3巻を買っている人は、
TOKYOPOP版の購入を控えたのに違いない。だから、
TOKYOPOP版第1〜3巻の売上げは、あまり良くなか
ったのだろう。その結果に合わせて、第4巻の刷り数
を減らしたところが、第4巻から買おうと思っていた人
達が殺到して、あっという間に品切れになってしまった
のかもしれない」
というものでした。
そういったファンからの疑問を受けて、MangaBlogの
Brigid Alversonさんは、TOKYOPOPのマーケティン
グ・ディレクターであるMarco Paviaさんに質問をします。
MangaBlog 2009年1月29日付け記事
"Where is Aria?"
返ってきた答えは、品切れの理由は、やはりTOKYOPOP
の予想を上回る注文があったから、というものでした。
ただし増刷の可能性については、現在の厳しい経済状
況もふまえて、明言を避けています。
ここで考えてしまうのは、今回のTOKYOPOP版の出版
においては、「ARIA」の前史、内容的には本来の物語の
始まりのパートになる、「AQUA」第1&2巻も、合わせて
ラインナップされていたことなんですね。
「AQUA」第1巻の発売は、2007年10月9日、第2巻は
2008年2月5日と、「ARIA」第1巻の2008年1月8日を
はさむ時期でした。
つまり、ADV版「ARIA」を買っていた人でも、北米では
未出版だった「AQUA」は買っている筈なので、TOKYOPOP
としては、北米の「ARIA」シリーズ購買者数は、ある程
度把握出来ていたと思います。
「AQUA」の売上げから、「ARIA」第4巻を買ってくれる
だろう人達の数も想像出来るわけですね。
「ARIA」のファンであるような人が、「AQUA」の存在を
知らない、買おうとは思わない、とはあまり考えられない
のですけど、「ARIA」第4巻の売上げが、TOKYOPOP
の予想をずっと上回ってしまったということは、その可能
性も有り得るかもしれませんね。
一方、「ARIA」第4巻が手に入らないことを訴えていた、
Johanna Draper CarlsonさんのブログComics Worth
Readingの、1月29日付け記事、
"Tokyopop in Trouble: More Cancellations,
Including Aria"
では、その前日付け記事のコメント欄で提供された
情報として、コミック最大手ディストリビューターである
Diamond Comic Distributorsの公式サイトで確認出
来る、出版予定がキャンセルされた作品のリストに、3月
10日発売予定だった「ARIA」第5巻を含む、TOKYOPOP
の16タイトルが記載されていることが伝えられます。
それらのタイトルは――
・「ARIA」第5巻
・「CAUSE OF MY TEACHER」
・「狂い咲きの花」第5巻
・「デーモン聖典」第1巻
・「.hack//SIGN」マンガ・小説特別版
・「エレメンタル・ジェレイド」第11巻
・「ゲットバッカーズ」第28巻
・「頭文字D」第34巻
・「獣王星」第3巻
・「King of Hell」第23巻
・「愛しあってる2人」
・「スピードグラファー」第3巻
・「Tactics」第8巻
・「この醜くも美しい世界」第1巻
・「月詠 -MOON PHASE-」第13巻
・「V.B.ローズ」第6巻
といった、3〜4月に出版が予定されていたタイトルでした。
さらにこれを受けて、 MangaBlogのBrigid Alverson
さんは、TOKYOPOPのマーケティング・ディレクター
Marco Paviaさんに、再度質問を送ります。
MangaBlog 2009年1月30日付け記事
"More on those Tokyopop cancellations"
Paviaさんは、キャンセルが出版それ自体の中止・打
ち切りを意味するのではなく、あくまでスケジュール調
整のための延期であると説明しました。
TOKYOPOPは、昨年からのレイオフを含む事業再編
の最中で、マンガ出版スケジュールについても、数を
減らしていくことを伝えていましたから、その一環の動
きということですね。
とりあえず、英語版「ARIA」の出版が打ち切られると
確定したわけではない、とは言えますが、「未確定」以上
のことが言えないのも事実です。
この辺のことは、「ARIA」だけの話ではなく、出版社と
してのTOKYOPOP全体の業績の問題でしょうから、
難しいんでしょうね。
もちろん、「ARIA」が、TOKYOPOPの稼ぎ頭である
「フルーツバスケット」くらい売れていたら、こういう話
には巻き込まれなかったろうとも思います。
いつもチェックしている、北米のオンラインストアの売
上げランキングでも、「AQUA」「ARIA」双方の姿を見
かけたことは、ほとんどありませんでしたから。
ともあれ、今回の事件を受けて、北米の「ARIA」ファン
達の、続刊を求める切実な声をたくさん読めたことが、
ひとつの収穫でもありました。
また、公式に確定した情報が出たら、お伝えしたいと
思います。